シトロエンC5 X、
その独自性の秘密

　ひと目見て、他の何者にも似ていない。新しいシトロエンC5 Xの外観デザインは、ただ個性的とか独特であるだけでなく、異質とすらいえるものだ。では、その異質さの正体はどこから来るのか？

　長くボリュームのあるフロントボンネットは、ハイエンド・サルーン的だが、なだらかに伸びるフロントウィンドウからルーフへのライン、強く前傾したリアウインドウは、シューティングブレークそのもの。一方でボディ下端のラインは地面から水平に高く引かれ、19インチの大径ホイールとハイトのあるタイヤも相まって、地上最低高クリアランスが強調される。ようはボディ全体を高くもち上げて見せる点だけは、SUV的ですらある。この独特の姿勢こそが、腰高に見えやすいオールテレイン型ワゴンや、地面を這うほどにスポーティな従来的シューティングブレーク、あるいは昨今流行りのSUVクーペとも、一線を強く画す。

既存の表象的コードを巧みに切り取ってバランスをとることで描かれた、知的でいてエモーショナルなシルエットは、まさにシトロエンの真骨頂。シトロエンは100年以上の伝統をもつコンストラクターでありながら、時に反逆的で、時代の前衛となる車を生み出してきた。C5 Xは間違いなくシトロエンの新世代フラッグシップだが、ただ高級に造られただけの一台ではない。高級とは、ハイエンドとは何ぞや？という、時代が進むごとにラグジュアリーのふさわしい在り方をアップデートすることを怠らないのが、シトロエン流なのだ。

今回の試乗は、1.6Lツインスクロールターボの180ps。「ピュアテック180」というガソリンのICEを積んでおり、日本導入仕様とは異なるが‘グリ・プラチナム’のエクステリア・カラーで、インテリア内装は ‘ハイプ・ブラック’というウッド＆レザーのトリム。360度ビューカメラやバックモニター、最新世代の緊急ブレーキアシストシステムやADASを標準装備するシャイン・パック仕様だ。朝もやの立ち込めるパリから、北東へ約130㎞の街ランスと、その周囲を取り巻くルート・ドゥ・シャンパーニュへ足を運ぶ、そんなショートトリップへ出発した。