日本で人気を集めてきたシトロエンといえばGS、BX、Xantiaなど歴代のミドルサイズモデル。実用的かつ前衛的なスタイリングとハイドロニューマチックの素晴らしい乗り心地で日本の車好きを魅了した。新型C4はそんなミドルサイズ・シトロエンの正統な後継車だ。
新型シトロエンC4のルーツはどこにあるのか。第2次世界大戦前まで遡れば1928年に発表された、その名もC4という車種があった。でも現役のエンスージァストがまず思い浮かべるのはGS、BX、エグザンティアという、ハイドロニューマチックサスペンションを持つミドルサイズの3車種あたりではないだろうか。
GSが1970年に世に出る前にはアミ6やアミ8がこのクラスを担っていた。しかし両車のプラットフォームやエンジンはベーシックカー2CVと基本的に共通で、フラッグシップを務めていたDS/IDとの差は大きかった。
1970 シトロエン GS(クラブ)
その点GSは、空冷水平対向エンジンが2気筒から4気筒になり、一新されたプラットフォームにはハイエンドの車種に使われていたハイドロニューマチックサスペンションを盛り込むなど、戦後のシトロエンが初めてゼロから開発したミドルサイズにふさわしい先進性や独創性を備えており、多くの人に絶賛されたからだ。
当初はハッチゲートを持たなかったが、1979年に発表された進化型のGSAで5番目の扉を手に入れるとともに、内外装をモダンに仕立て直した。そして1982年には後継車のBXを迎え入れることになる。
1982 シトロエン BX(16TRS)
この間シトロエンはプジョーと合併してグループPSAの一員になっており、BXのエンジンはプジョーの水冷直列4気筒となり、イタリアのカロッツェリア、ベルトーネの手になる直線基調のフォルムに一新した。
ハイドロの伝統とフレッシュな造形のマリアージュが、新たなファンを育んだ。とりわけ日本では西武自動車販売に加え、マツダのユーノスチャンネルでも販売が始まったおかげで、フランス車としては例を見ないほどのヒットになった。
このBXの後継として1993年に発表されたのがエグザンティアだ。ハッチバックながら短いノッチを残したボディは、剛性感の向上も印象的だった。当時のフラッグシップXMで最初に採用された電子制御のハイドラクティブサスペンションが導入されたこともニュース。ただし伝統のハイドロニューマチックも選ぶことができた。
1993 シトロエン エグザンティア(V-SX)
世代交代のたびに、ボディサイズは拡大していった。そのためベーシックモデルとのブランクを埋めるべく、BXの頃にはZX、エグザンティアの時代にはクサラが存在していた。これらの発展形として送り出されたのが、初代と2代目のC4だった。
しかしながら新型C4には、これまでのC4とは違う流れを感じる。持ち前の快適性を最新テクノロジーでレベルアップしたうえに、流麗なプロポーションで見る楽しみも味わわせてくれる。ミドルサイズ・シトロエンが新たなフェーズに入ったことを実感するのだ。
2021 新型C4(SHINE BlueHDi)
※各車のスペックは日本導入時の代表的なグレードのものです
文:森口将之 写真:阿部昌也 編集:馬弓良輔
Words:Masayuki MORIGUCHI Photography:Masaya ABE Editor: Yoshisuke MAYUMI