株式会社カクイチの代表取締役社長で、「アンシェントホテル浅間 軽井沢」のオーナーでもある田中離有さん。「駅に着いた時点から非日常を味わっていただけたら」と、ホテルの送迎にC SIXを走らせることもあるというシトロエン愛好家です。
歴史を経た車を乗りこなすには、エンジンをかける段階から独特の作法や気配りが必要です。だからこそ田中さんは「シトロエンは乗ることが本当に楽しい車。どんなに古い車でも乗ることに価値があると思うので、飾っておくなんてかわいそうでしょ。壊れたら直せばいいんだから」と評します。五感を磨き、ancient(古代)の人が感じたものを取り戻そうというコンセプトのアンシェントホテル。その空間にぴたりと合うすばらしい名車とともに、取材させていただきました。
エグザンティアブレークの色に惚れ、C SIXと出会うまで
シトロエンに乗るようになったきっかけは?
たまたまエグザンティアブレークに出会って、その色に惚れて買っちゃいました。その車には12年間、ずーっと乗り続けていたんですが、ちょっとミッションの具合が悪くなって。手放してからは他の車にも乗りましたが、最後に同じテイストの車、CITROËN C6のディーゼルに行き着きました。
そこからC SIXにつながっていったんですね。
C6を持っていたので、C SIXの話が来たんですよ。「見る人も乗る人もなかなかいないのでかわいそうだ」と。
シトロエンの人ってけっこう先祖返りするんですよね。「C6のご先祖様はどんな人かな」と見に行って、この車をホテルに置いたらみんなが見て喜んでくれるんじゃないかなと思ったんです。
来た人がC SIXに触って、見て、乗って、感じてほしかったので、ホテルに置いて乗れるようにしています。
「母屋があるなら離れも」と、手に入れたのが2CV
2CVとはどのようにして出会ったのですか?
シトロエンをもう一台持ちたいなと思っていたときに、「母屋があるなら離れを買いなさい」と言われたんですよね。離れといえば2CVでしょって、ブルーの2CVを手に入れました。
なんというか、それぞれが躍動感を持ちながら一生懸命一緒に走っているような、そんな感じが好きです。
五感を磨くホテル空間とシトロエンの相性
アンシェントホテルにC SIXを置かれた意図は?
アンシェントホテルは、視覚以外の五感をもっと磨く、その大切さに気づく空間を作りたいと思って、昔の人が感じたものを取り戻そうというコンセプトを込めたホテルです。
ガレージメーカーが手がけるホテルなのにガレージがないのはおかしいじゃないかということで、C SIXのためにガレージを設計しました。普段はバーにしていて、ホテルに泊まった人があそこで1930年代にタイムスリップするんです。
五感を磨くための空間に合致した車だったんですね。
五感って何かって言うと、車のもたらす振動とか、ガソリンの匂いとか、ソファのやわらかさとか、音もそうですね。そういったいろんな部分で現代車にないものがあると思って、ひとつの象徴としてC SIXを置いてみました。
シトロエンの乗り心地、魅力は?
長年シトロエンに乗ってこられて、どこが魅力だと思われますか?
シトロエンは、ハンドルを握った段階でもう違いがわかるし、乗り出してもすべてが絶対的に違います。車と対話している感覚が、シトロエンファンになってしまうひとつの大きな理由だと思います。
シトロエンか他の車か、っていう選択なんですよ。
今の社会にないものがそこにあるような、今足りないものがそこにあるというのが私の感覚ですね。
田中 離有さん、あなたにとってシトロエンとは?
「今足りないものがそこにあるような、
ないと困るものがシトロエン」
取材協力