都内某所「FOURGONNETTE」と名付けられた’特別な場所’からお届けする番組です。
115回目の放送となる今回は、FOURGONNETTE社会見学! 活版印刷の世界へ足を踏み入れます。
久々の社会見学! 活版印刷の世界
この音、この雑踏。いつもと違う街の音という感じがしませんか?
いま私がいるのは、東京都新宿区の榎町というところです。
ここは、新宿区の北東部、牛込地域と言われていますけども、神楽坂付近といえばなんとなくイメージができるでしょうか。
いいですよ、僕はこの辺りはなんとなく昔の雰囲気が残っているようなエリアで、ちょっと楽しみにしてきましたけど。
そして、この榎町というエリアは昔からお寺や印刷関連の会社が多い街。
今日は、古き良き印刷の文字の世界に触れてみようとここにやってきたわけです。
CITROËNのフォントも専用のフォントを使っていますし、字は体を表すという言葉もあるくらい、文字はアイデンティティそのものだということで、私が今日やって来たのは新宿区榎町にあります、佐々木活字店!
いま、お店の前にいるんですけども、いいですね〜。このタイル張りのダークグリーンと言いますか、グレーと言いますか、そこに佐々木活字店とゴールドでまさに活字のような感じで浮き出した屋号が主張しております。一台原付が止まっていますね〜。
住むならこういう家がいいなという感じの建物ですね。
さあ、今夜のCITROËNFOURGONNETTEは、お店探訪回!
佐々木活字店にお邪魔して、活版印刷について学んでいきたいと思います。
さっそく、お邪魔いたします
活字の入った木の箱のような棚が、ウワーっと並ぶ店内。
そして、いい匂いがします。紙の匂い? インクの匂い?
カウンターにドシっといらっしゃいますのが、店主の佐々木勝之さんです。
勝之さんで4代目の佐々木活字店。
佐々木活字店は、大正6年に日清印刷、のちの大日本印刷鋳造部の責任者をしていた、佐々木巳之八さんが榎町で創業したとのこと。
107年間ずっと同じ場所。
関東大震災、第二次世界大戦も経験。その間休業することも多かった。
空襲の影響で焼けた過去もあるのだとか。
そんな佐々木活字店は、いまでも活版印刷をやられている会社。
昭和から平成になる頃、印刷業界は活版印刷からオフセット印刷へと切り替わっていく中で、佐々木活字店はもともと活字の製造販売をやっていたこともあり、そのままやり続けてしまったと勝之さん。
当初は活字の製造と販売。印刷はやっていませんでした。
活字の販売だけでは大変になってきたので、鋳造→文選→植字→印刷の全工程を行っています。
店内を案内していただいてもいいですか?
店内に並ぶ、ケース棚。活字が全て収納されています。
佐々木活字店にある活字は、700万前後!
文字の種類というよりも、同じ種類の文字がたくさんあるとのこと。
トン数にすると40トン!
全ては、部首・画数順に並んでいます。
置いてあるものに、全て歴史を感じますと長岡。
活字は鉛合金。
ほぼ鉛ですが、その中にアンチモンと錫が混ざっている。
それを鋳型に流し込んで鋳造されます。
一つ触ってみたい!
かっこいいですね〜と声を漏らす長岡。
勝之さんに長岡の“長”を見せていただきます。
声から、テンションが上がっているのが分かります。
小さいものを見せてもらうと、「うわ、小さい! 老眼になってきてるから見えないな!」とひと言。勝之さんも「私も見えません……(笑)」と。
「すごい! すごい!」と技術力に関心する長岡。
活版印刷の工程は4工程。
鋳造→文選→植字→印刷。
余白部分も版に組み込まないといけない場合もあるので印刷に写らない部分も活版印刷のひとつ。
鋳造工程をご覧になりますか?
2階に上がると、広がるのは鋳造機の数々。
こちらの機械にも歴史を感じます。
剥き出しのエンジンのような、鋳造機。
詳しい説明を受けます。説明するのが、難しい……。
メンテナンスも大変そう。
昭和30年代に作られた、鋳造機。
昭和20年代後半から市場に出始めて、40年代〜50年代まで市場にずっと出ていた機械。
「カッコいいな! すごいですね!」と長岡。
実際に機械を回していただきます。
真鍮でできたものを機械に入れて……。
機械の音が耳に届きます。ガチャンガチャン。いいですね。
マニアックなお話に興奮する長岡。
活字は高さが大事とのこと。
次は、印刷工程を拝見。
組版の説明もしていただきました。
インクの匂いが漂う、印刷所。
ここからは会長の精一さんも参加していただきます。
実際に機械を動かして、活版印刷の実演を拝見。
線の細さが特徴な佐々木活字店の活字。
これはなかなか出せないとのこと。
お店の哲学とは?
インタビュアー長岡亮介がお話を聞きます。
――フィジカルとしての文字の意味とは?
勝之さん「データ化されて、画面上で見られる文字と実際印刷されて見る文字では違いがある。紙媒体が落ち目になってきているけど、縮小化はされるけどなくなることはまずない。現在の印刷の主流とは違う、見え方がするのが活版。シャープさや小さい文字が見やすいこと、これは私の感覚でしかないけれどそういう部分もあるのではないかと思います。昔のものではあるけど、良さは絶対あるので」
――これから佐々木活字店はどうしていきたいですか?
勝之さん「本当は会長の代で終わる予定だったんですけど、父に無理を言って継がせていただいた。やめとけと言われたんです。自分が頑張れる範囲で残していきたい。あとは、いろんなことに挑戦していきたいですね。活字が足らないという部分も解消していきたいですし、茨の道ではあるんですけど。活字屋さんがなくなったらおしまいなので、踏ん張っていきたいです」
――素晴らしい心意気です。お店の哲学はありますか?
勝之さん「とにかく生きてくために、商売なので、やはりそこはしっかりやっていかないといけない。そこの中で個人的に思うのはとにかくお客さんにNOとは言いたくないんです。活版印刷は未完成な技術であり、お客さんの要望に応えられない場合もあるんですが、そういうものも含めて活版印刷。そういうことを言いながらもなるべくお客さんに応えていきたい」
――比較するものではないような気がします。
勝之さん「不便利さというんでしょうか。そこに何かある」
ありがとうございます。最高でした!
佐々木勝之さん、佐々木精一さん、ありがとうございました!
今夜の放送、いかがでしたでしょうか。
活字の世界が気になったことでしょう。
それでは、来週の放送もお楽しみに!
オンエア楽曲
For Me and My Gal / Van & Schenck
Smoke! Smoke! Smoke! / Tex Williams
テネシー・ワルツ / 江利チエミ
You Send Me / Sam Cooke
本日のライナーノーツ
久しぶりのFOURGONNETTE社会見学。今日は新宿区榎町に来ています。新宿区の北東に位置する牛込地域。歌舞伎町のある新宿と同じ区でもこちらはどこかまったりとした空気が流れ、古き良き雰囲気を感じることができます。本日お邪魔するのは、佐々木活字店。活版印刷の世界に触れていこうという115回目の収録ですが、現地に到着すると長岡亮介の姿はまだなく……。
先にスタッフチームで打ち合わせを開始すると、走って現れた長岡。まるで箱根駅伝のゴールシーンのように颯爽と登場しました。「すみません!! 電車逆方向のやつに乗っちゃった!!」とひと言。お茶目な姿を垣間見ることができました。長岡も交えて打ち合わせがスタート。佐々木活字店の佇まいを見て、「いいね〜! カッコいいな」と長岡。「こういう家に住みたいんだよな」と。「よし、スタートしよう」と長岡が号令をかけると収録はスタートします。
大正6年創業の佐々木活字店は、本日お話を聞いた勝之さんで4代目。107年間ずっと同じ場所で家業を営み、関東大震災、第二次世界大戦も経験された歴史あるお店。中に広がるのは、700万前後の活字が収納された棚。総重量は40トン! なかなか触れることがない活字の世界に長岡は冒頭から興奮しています。「写真撮ってもいいですか」と幾度となくカメラを取り出し、撮影する長岡。
「みんなに分かるように説明したいんだけど、言葉が出てこない」と頭を抱えて悩む姿。この空間をリスナーに伝えようと試行錯誤しているご様子。古き良き世界が広がる佐々木活字店、長岡は「カッコいい〜!」と何度も声を漏らしています。鋳造する機械を目の当たりにして、またまた興奮する長岡。ガチャンガチャンと音が鳴る作業場、そこには職人さんの汗と努力の結晶が詰まっているわけで。そんな空間にまたもや「ここ、カッコいいよ」とひと言。
活版印刷とは何なのか、勝之さんに丁寧に教えていただく貴重な経験。鋳造→文選→植字→印刷、全ての工程を行う佐々木活字店でしか学ぶことができないであろう活版の魅力。長岡は「うんうん」と勝之さんの言葉に耳を傾けています。
印刷工程の説明では、先に作業をしていた先代の精一さんの姿。精一さんの手を見ると、完全に職人の手なんです。これまで多くの活字に触れ、印刷をしてきた手。ここでも歴史を感じます。印刷所に広がるインクの匂い。「いい匂いですね」と長岡。終始、職人のお仕事に感銘を受けた久々の社会見学になりました。
収録後は、記念撮影をして、まだまだ話し足りないのか、長岡は勝之さんと楽しそうに談笑。今回の収録もとても有意義なものになりました。
撤収作業が終わると、神楽坂までみんなでお散歩。
さて、このあとのご予定は……。
それでは、今回はこの辺りで。
来週のライナーノーツもお楽しみに!
文:笹谷淳介